「どうして人間は生きているのですか?」

7月3日(日)、福岡伸一さんの講演会「生きているって、どういうこと?」を開催しました。

雨予報をくつがえし、暑い日の午後、県内外からたくさんのお客様にお越しいただき、会場も熱気に包まれました。

講演会は、福岡先生の子供のころの話から始まりました。

昆虫が大好きで友だちがいなかった少年時代に、親御さんに顕微鏡を買ってもらってますます昆虫に夢中になってしまったという福岡少年。その頃からの好奇心が、今までの福岡先生を形作っているのだなと思いました。

そして、私たちの細胞は常に入れ替わっている、なのに私という外観はほとんど変わらない理由や、ウイルスや花粉症に対抗する薬のしくみとその末路について、など、ちょっと難しそうな話も身近な例を織り交ぜて分かりやすく話してくださいました。

メカニズム=機械的に生命を理解しようとしても、生命はそう単純ではない。パーツをくみ上げれば同じものが出来る、という理論では生命は説明できない。

偏りがあれば元に戻そうとする、障壁があれば乗り越えようとする、変わらないために変化する。

そんな生命の営みを「流れ」ととらえたシェーンハイマーという研究者がいたことを知り、「動的平衡」という福岡先生の生命観が生まれたというお話は、この講演会のハイライトでした(個人的感想です)。

そして、後半はもう一つの福岡先生の大好きなもの、フェルメールの絵画についてのお話。

世界中に散らばっているフェルメールの原画をすべて見て回り、その精巧なレプリカまで作ってしまった福岡先生は、アメリカやオランダなどでも話題の人となり、いわゆる「オタク精神」が巻き起こした様々なエピソードをお話されました。

しかも、フェルメールが生まれた町には、同い年のレーウェンフックという少年がいて、のちに世界で最初の顕微鏡を発明するのです。きっと、福岡先生にしかたどり着けない奇跡の偶然ですね~!

講演後の質疑応答も、とても濃い~内容の質問ばかりで、福岡先生も誠実に丁寧に答えてくださいました。その中でも、特に印象的だったのが

「どうして人間は生きているのですか?」

という、子供さんからの質問。これには福岡先生も「どうしてでしょうねぇ~、難しい質問ですね(笑)」とやや困惑された様子でしたが、「どうして生きているのかを知るために、生きているのかもしれません」と返していただきました。

近年まれにみるハイレベルな講演会でしたが、福岡先生のお人柄のおかげで、子供から大人まで満足していただける、とても充実した内容となりました。

終了後のサイン会も長蛇の列で、お帰りの時間ぎりぎりまで応じてくださいました。福岡伸一先生、本当にありがとうございました。