ベートーヴェンが出さなかった手紙

「日独交流160年記念 有田とドイツと音楽と」の第2弾となるコンサート、『ベートーヴェンの手紙』を6月16日(水)に開催しました。

有田は長年、ドイツのマイセン市との交流がありますが、実はそのさらに前からドイツとのご縁があったのです。しかもピアノという楽器を通じて。

今年、創立150年を迎える有田小学校には、今から95年前にドイツからやってきた、シードマイヤー社のピアノがあります。地域の有志によって購入されたもので、当時としては大変珍しく、貴重なものでした。(詳しくはこちら

今は使われずに学校で保管されていますが、この貴重な楽器のことをもっと知ってほしいと思い、日独交流160年という節目に、このピアノの絵本を作成し有田小学校でミニコンサートを開催することになりました。

絵本は、落語家の柳家三三さんに朗読いただき、その前後に横坂源さんのチェロと、川口成彦さんのピアノによる演奏をしていただきました。

 

生徒の皆さん、朗読も演奏も、真剣に聞いてくださっていました。シードマイヤー社のピアノはもう引退していますが、いつかまたその音色を聴ける日が来ることを願っています。

 

さて、朝から降っていた雨も午後には上がり、清々しい夕暮れ時、いよいよ『ベートーヴェンの手紙』の開演です。

今回のコンサートは、音楽だけでなく「語り」(しかも落語家の!)が入ると聞き、最初は正直想像がつきませんでした。ヴァイオリンの佐藤俊介さんが言う「西洋の伝統(クラシック音楽)と日本の伝統(落語)の融合」が一体どんな形になるのか?ドキドキしたのですが…

1曲目のエグモント序曲。ヴァイオリン、チェロ、オーボエ、バンドネオン、ピアノというたった5人の演奏とは思えない音の厚みと壮大な世界観に、一気に引き込まれます。

そして演奏が終わると、柳家三三さんの軽妙な語りが始まり、ベートーヴェンという偉大な作曲家が、一人の人間として目の前に立ち現れてきます。

こうして、演奏と語りが交互に呼応しながら、実際に残っているベートーヴェンの書いた手紙を軸に、彼の人生の苦悩や、彼が作った音楽の背景にあった思いなどを深く理解できるような構成になっていました。

 

コンサートの最後は、有名な「不滅の恋人」あての投函されなかった手紙。柳家三三さんの解説と朗読には胸が熱くなりました。ベートーヴェンが出さなかった手紙、200年の時を経て、会場の皆様の心にはきっと届いたのではないでしょうか。

そして何より、演奏の素晴らしさ!本当に5人だけとは思えない音色に、クラシック音楽にうとい私でさえも、心が震えるような感動を覚えました。鳴りやまない拍手の中、アンコールにも急遽応えていただき、興奮のうちにコンサートは無事終了しました。

コロナ下にもかかわらず、当日はたくさんのご来場ありがとうございました。また、4月のピアノリサイタルに引き続き、「有田とドイツと音楽と」実行委員会のメンバーの皆様には多大なるご協力をいただき、ありがとうございました。

そして、舞台上の6名の奇跡の出会いに、心より感謝いたします。あっ、7名ですね。ベートーヴェンさん、忘れるところでした。Vielen Dank!

 

さて、次のコンサートはサマージャズです!詳しくはこちら。

どうぞお楽しみに~!